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2020年3月25日 (水)

既知の病では死なない世界の到来

これからは誰もが『人生100年時代』※1.を生きると言われている。その背景は、近年の医療やテクノロジーの発展によるものであるが、更にその先の医療の研究と治療技術の開発を考えると『人生100年』では“終わらない時代”(=病では死なない時代)がやってくるかもしれないと思える。
仮に、「病では死なない時代」が実現したならば、人間の世界はどのように変化するのかについて仮説的考察をしてみたい。(但し、本稿では、法律・倫理・思想・経済的・個人的事情といった観点は考慮せず、あくまでも医療やテクノロジーが発展した世界になった場合の“新しい世界”について想像を膨らませていることを先にお伝えしておく。)

まず初めに、これからの世界を3つのLife Phaseに分けてみた。
『Life Phase1:誰でも病による死が存在する世界』
『Life Phase2:医療の完成により“既知の病では”死なない世界』
『Life Phase3:医療の完成とテクノロジーの発展による未知の病も含めた不老不死の世界』

現在の世界は『Life Phase1:誰でも病による死が存在する世界』が該当しているのは言うまでもないが、がん等の死亡率が高い疾患を患ってしまった場合、多くの人が治療に専念するために仕事を制限する必要があり、治療後も再発リスクから常に“死”を意識して生きなければならなかった。

そして次に訪れると考える、『Life Phase2:既知の病では死なない世界』については、あるビジネスパーソンを想定したシチュエーションでイメージしてみることで、『Life Phase1』の世界との違いに着目してみたい。

40代半ばのビジネスパーソンであるあなたは、これまでの会社での功績が認められ、社運を賭けた大きなプロジェクトのマネジャーに大抜擢された。プロジェクトの完遂までを万全の体調で挑むため、人間ドックに行き、AI(人工知能)が搭載されたCT画像による診断を受けると、人間では見落としがちな小さな膵臓の腫瘍が発見された。幸い早期発見であったため、PET検査※2.で遠隔移転は無いと分かった。そして、幸運にも海外在住の世界的権威である医師が遠隔ロボットによる手術を執刀してくれることになり、膵臓の原発巣はきれいに切除された。遠隔ロボットによる手術痕は数センチで行われたため、入院期間は1週間程度で済み、退院後すぐに職場復帰を果たしたあなたは、3カ月ごとの定期CT検査、自身の遺伝子情報を用いたiPS細胞※3.で移植用臓器が造れる細胞バンクオプションを申し込んだ。そして、自身でもがん関連の常時フォローアップを行うウェアラブル端末を装着し、血液・排泄物をリアルタイムモニタリングしてくれる住設機器を自宅にセットすることにした。
大きなプロジェクトが無事に完遂した2年後、自身のウェアラブル端末からのアラートにより病院を受診し、がんの遠隔転移が見つかったが、早期発見であったため、がん細胞に直接働く免疫療法と、保存していた細胞から生成したiPS細胞を活用して、がん細胞があった部分の再生を行った。今後も、がん発症のリスクはあるものの、予防・診断・治療を早期に行う事が出来れば、病による“死”を恐れることなく生きることができるので、引き続き会社の第一線で様々な大プロジェクトに携わっていった。
数年後、『人生100年時代』の折り返し地点の50代になったあなたは、残りの50年のライフプランを見直した結果、体調の不安を感じることなく様々なことにチャレンジすることに楽しさを感じ、自らの会社を立ち上げることを決意し、これまでになく濃密な毎日を送るようになった。

というように、Life Phase2では、AI診断・遠隔ロボット手術・iPS細胞による再生医療といった医療の完成と、予防・経過観察をテクノロジーが補完することによって、『既知の病では死なない世界』となる。このような世界の実現に向けて、今の世の中では既に様々な研究や技術開発が行われており、あと数年後には実現されることは想像できることだろう。(とはいえ、Life Phase2では希少疾病や未知の病、突然死などによる“死のリスク”はまだ一定数存在はしており、“病による完全な不死時代”になるのは次のLife Phase3の世界となる。)

先ほどのビジネスパーソンのようなLife Phase2『既知の病では死なない世界』がいよいよ実現することにリアリティが出てきていることを考えると、私たちはLife Phase1からLife Phase2の変化点を生きていると言える。
Life Phase1からLife Phase2へ移行すると、『世界』が変わるだけでなく、『病による死との付き合い方』も変わる。Life Phase2では、これらの変化を受け入れて自分自身の価値観を変えなければ、充実した人生を全うできなくなる人が出てくるかもしれない。
そう考えると、Life Phase1からLife Phase2への移行を見据えて、変わるものと変わらないもの、変えるべきものと変えるべきではないものについて、これまでの固定概念を思い切って捨てて、改めて考えることが必要なのかもしれない。

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※1.人生100年時代:『LIFE SHIFT』(https://book.toyokeizai.net/life-shift/about/)
※2.PET検査:㈳日本核医学会(https://www.pet-net.jp/pet_html/treat/pet.html)
※3.iPS細胞:京都大学iPS細胞細胞研究所(https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/yamanaka_summary.html)

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