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2019年10月23日 (水)

人は変わることができるのか

  先日、前職(新規事業開発の支援会社)で一緒に働いていた同僚と数か月ぶりに会った。会話するうちに筆者は、同僚が見違えるように変わったと感じた。同僚は、自身の考えを伝えきれず周囲の雰囲気に流されてしまうところがあった。また、顧客と会話する時には頭が真っ白になってしまい、何を発言すればよいのか分からなくなり、“自分は顧客に価値を提供できないため対価をもらう 資格のない人間だ”と自虐的になるなど、自信がないようにも見えていた。しかし、会わない間に同僚は、おかしいと思ったことをおかしいとはっきり口にするなど自分の気持ちを明確に表現するようになり、言動には自信がみなぎっていた。

 同僚に聞いてみると、「顧客への提供価値は会議で気の利いたことを発言することだけではない。自分は、対価を得ることを難しく考え過ぎていたため、自身のやり方でお金を稼げるようになることを目指した。そして、個人事業主として成功している人に共通する要素を自分なりに見つけて、その要素を取り入れるようにした。」と言っていた。

 また、「同じような悩みを持ちながらも自分らしく生きようともがいている人と意識的に付き合うようにした。自分はコミュニケーションが苦手なダメな人間だと自己否定の感情を持たないためにも、あえて前向きな言葉を使うようにしている。」と言っていた。

 他にも、「“楽しくない・やりたくない”と思うことはしないようにした。相手のペースに合わせた対人折衝を求められる仕事は不得手であるため、脱サラし元々副業していた転売やアフィリエイトなどほとんど自己完結できる仕事にシフトし、個人事業主として独立した。」と言っていた。

 筆者は、人は短期間でこうも変わることができるのかと驚いた。人には、内部や外部の環境変化に関わらず生体の状態が一定に保たれるホメオスタシス(恒常性)と呼ばれる性質があると聞くが、元来人が変わることは難しいと考えていた。同僚が変わることができた理由を改めて同僚との会話や調べたことを参考に考察してみたい。

 同僚との会話を整理すると、同僚は自身を変えるために、①なりたい姿をイメージし、②付き合う人を変え、③言動を変え、④苦手なことを捨てた、ということだろう。

 まず、4つに関わる内容について調べてみると、“レファレント・パーソン論”という考え方に行き着いた。いわゆる自己肯定感を高めるための手法で、偉人の生き方、価値観、思考法、行動を参考に、自身の課題を見つめ直し人生の判断や選択をするというものだ。同僚が、個人事業主として成功している人に共通する要素を参考に自身のやり方でお金を稼ぐこと目指し、同じような悩みを抱えながらももがいている人と付き合うようにしたことや自己否定の感情をなくすためにあえて前向きな言葉を使うようにしたこともこの考え方に当てはまると思った。

 次に見つかったものは、“人は3日で変われる”というアドラーの言葉であった。近年、“嫌われる勇気”などアドラー心理学に関連する書籍をよく見かけるが、アドラーの主張は、“人は、変われないのではなく、変わらないという決心を下しているに過ぎない。変わる勇気があれば人は変わることができる。”ということに集約される。その思想から“勇気の心理学”とも呼ばれている。同僚が、“楽しくない・やりたくない”と思うことをしないと決め、不得手な対人折衝を伴う仕事をやめたことは、苦手なことを捨てる勇気を持つというアドラーの考え方に類似していると思った。

 このようなことを調べるうちに筆者は、同僚が自身を変えるために実施した①~④は、ビジョンの策定、アライアンス先やターゲットの変更、コーポレートメッセージの変更、リストラクチャリングなど企業の変革戦略に通じているということに気が付いた。

 通常、企業は自社を変革して持続的に成長するために戦略を策定する。筆者が考える戦略は、なりたい姿を明確に描き現状とのギャップを埋めること、つまりAs-IsとTo-beを明確にすることから始まる。同僚は、個人事業主を目指してなりたい姿を描き、個人事業主で成功している人の共通要素を洗い出すことで、なりたい姿と現状とのギャップを埋めようとしていた。

 また、企業が新たなビジネスモデルに変革する際に、アライアンス先や獲得する顧客層を変更するように、同僚は同じ悩みを持つ仲間と集まるなど付き合う人を変えていた。

 他にも、企業が新たなビジョンの実現に向けて社員の行動を変える際に、コーポレートメッセージを変えるように、同僚は思考や行動がより前向きなものになるように自身の発する言葉を意図的に変えて(コントロールして)いた。

 そして、企業が自社の弱みを捨てて、自社のリソースは全て強みを伸ばすことに集中させる“選択と集中”を行うなどリストラクチャリングを敢行するように、同僚は転職、副業、兼業、自営業、アルバイト、フリーターなど様々な選択肢がある中で、自身の経験を活かした転売やアフィリエイトで稼ぐ個人事業主になるなど“選択と集中”を行っていた。

 不思議なことに、上記4つを実践している企業は多くあるにも関わらず、イノベーションが起きづらい昨今の企業状態を踏まえると、変革成長を遂げている企業は少ないように思う。そこで筆者は、同僚の以下のような発言を思い出した。

 「個人事業主で生計を立てられるようになったノウハウを自分で稼ぎたいと思っている人に伝えている。転売やアフィリエイトなどのスモールビジネスは、世間ではあまりいいイメージを持たれていないが、ノウハウを共有することで関わった人を幸せにできる仕事であると思う。その中で、自分と同じように自己否定の感情で苦しむ人がいたら、自信を持って生きていけるようになるためのサポートをしたい。」

 つまり同僚は、個人事業主としての成功を目指しながら、苦しんでいる人を助けたいといった“誰かのために役に立つ”という思いを強く持っていた。そして、経験やノウハウを共有するなど、人を幸せにするという自身の思いを体現するための行動を実際に移していたのだ。

 企業の役割が、社会課題の解決や人々の生活を豊かにするという理念をビジネスという手段で体現することであるならば、“誰かのために役に立つ”という精神を持った人材を一人でも多く育成し、その価値観を企業全体に浸透させていくことこそが、企業の変革に必要な要素となるのではないか。

 今回の考察では、企業や個人が短期間で変わるためには、“誰かのために役に立つ”という精神を持ち、変革戦略である①~④のプロセスを踏むことが重要であるいう結論に至った。同僚のエピソードが、変わりたい、前を向きたいと思っている方に少しでも参考になれば幸いである。 

                                                                               R2D2

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