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2019年1月 7日 (月)

「働き方改革」を成功に導くには何が必要か?

筆者は、自他共に認める家族第一主義の人間です。昨年、我が家にも新しい家族が増え、より一層家族との時間を大切にするべく、7時出社、16時帰宅という朝方生活に切り替え、日々、家事・育児に奮闘しています。

そんな私からすると、大変驚く記事を年末に見かけました。タイトルは「残業が減っても男はテレビ見るだけ」です。内容を要約すると、以下の通りです(※1)。

 

  • 「仕事」と「家庭」の時間はトレード・オフではなく、単純に「男性は仕事の量にかかわらずあまり育児をしない。一方で女性は仕事が増えてもしっかり育児をする」という、女性へ過剰な負荷がかかった状況であること
  • 「男性は残業時間が短くても余暇を全く家庭に振り分けず、女性が家事・育児をしている。むしろ、テレビを見てくつろいでいる」ということ

 

いかがでしょうか。もちろん、記事で取り扱われているデータの信憑性やデータの捉え方(地域や年代によっても異なる可能性が高い)については疑義が残りますが、これらのデータを「正」とした場合、いったい、どれだけの男性が声を大にして否定できるでしょうか。最近では「フラリーマン」(まっすぐ帰宅するのが嫌で、会社を後にしてからフラフラと街をさまよう会社員)という言葉も生まれています。

 

昨今、「働き方改革」が叫ばれていますが、この事実一つをとって、「働き方改革」を否定するのはあまりにも短絡的です。その辺りを、「働き方改革」の背景から紐解き、成功に導くためには、どのようなことが必要なのかを明らかにしていきたいと思います。

 

 

それでは初めに、働き方改革の背景や概要について、振り返りましょう。

まず、背景ですが、首相官邸の公式文(※1)によると、『働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。』とあります。つまり、働き方改革とは、一言でいえば「一億総活躍社会を実現するための改革」と言えます。そして、一億総活躍社会とは、少子高齢化が進む中でも「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」を指します。

では、なぜ一億総活躍社会が目指されているかと言うと、その背景には「生産年齢人口が総人口を上回るペースで減少していること」が挙げられます。内閣府が発表している、日本の将来人口推計を見てみると、現在の人口増加・減少率のままでは、2050年には総人口9000万人前後、2105年には4500万人まで減少すると言われています。次に、実際の働き手となる「労働力人口」を見てみると、国立社会保障・人口問題研究所が発表した出生中位推計の結果によれば、生産年齢人口は平成25(2013)年には8000万人、平成39(2027)年には7000万人、平成63(2051)年には5000万人を割り、平成72(2060)年には4418万人となる見込みです。これらのデータからわかるように、このままでは、国全体の生産力低下・国力の低下は避けられないとして、内閣が本格的に「働き方改革」に乗り出したのです。

 

ここまでで、「働き方改革」の背景については理解できたことと思いますが、次にその概要について確認してみましょう。上記の通り、今後見込まれる深刻な労働力不足を解消するために、政府は、『➀働き手を増やす、②出生率の上昇、③労働生産性の向上』の3つを目指しており、その改革の柱として「長時間労働の解消」、「非正規と正社員の格差是正」、「高齢者の就労促進」を掲げ、「法改正による時間外労働の上限規制の導入」や「同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備」など、様々な取り組みを推進しています。

 

 

以上が、「働き方改革」の背景や概要となります。では、働き方改革に対する世論の評価はと言うと、賛否両論分かれているのが実態です。以下はあくまでも筆者の所感になりますが、仕事上、様々な企業と接している中で、掲げている改革の柱に対しては、政府、企業共に努力が見られ、一定の成果を出しているものと見ています。しかし、労働力不足の解消に繋がっているかと言うと、決してそうとは言えません。それは、冒頭で紹介した記事のように、男性の残業時間が減っていても、家事・育児への参加には結びつかないという事態が起こっており、結果として、上記で確認した『➀働き手を増やす、②出生率の上昇、③労働生産性の向上』には繋がっていないからです。つまり、3つの改革の柱との因果関係がない(≒明確になっていない)ため、「働き方改革」を実現していくためには、一つ一つの目標と施策の因果関係を明確にして、それらの実行管理を徹底することが必要だということです。言葉にしてみると至極当たり前のように思われるかもしれませんが、「言うは易し、行うは難し」です。上記の『➀働き手を増やす』という一つをとっても、日進月歩でAIを始めとするテクノロジーが進化する中で、どの分野の、どの年齢層を、どれだけ増やす必要があるのか等、様々な角度から検討していかなければなりません。正直、今の日本の他の国策をいくつか見てみても、因果関係が明確なものは殆ど見当たらないのが現実です。

 

ところで、昨年、筆者が最も印象に残っているセミナーで、新井紀子氏の「AI vs.教科書の読めない子どもたち」があります(書籍も出ているので、未読の人は是非お読みください)。その中で、新井氏は中高生の「読解力」が驚異的に落ちていることについて実験データを基に示していましたが、暗記中心の日本の教育事情では、致し方ないものだと妙に納得した覚えがあります。しかし、明快な施策を見出せていない政治を見ていると、問題は将来を担う現在の子どもたちだけではなく、既に大人として今の世の中を支えている現役世代にも深刻な影響として表出しているのではないかと危機感を感じてしまいます。もしかすると、長時間労働を解消する前に、今の政治家や官僚の「読解力」を鍛えることが、一番の近道かもしれません。

 

いよいよ、今年4月に残業時間に上限を課すなど戦後初の抜本改革と言われている働き方改革関連法が本格施行となります。日本が直面している少子高齢化社会に対する施策は、将来の自国に対する参考事例として、世界各国も注目をしています。未曾有の社会的問題に対して、日本は今後、どのように対応していくのでしょうか。先が読みにくい環境下においては、アジャイル的に進めることも大切かもしれませんが、国家の信用問題にも関わる以上、一日でも早く明快な施策を示して頂けることを期待したいものです。

 

 

<出典>

※1:【残業「なし層」と「あり層」を比較した時の時間の使い道】 
(平成28年社会生活基本調査 総務省統計局 のデータをもとに当該記事作成者が作成)

<男性>

仕事 -257 睡眠 +65 家事・育児 -2 テレビ・新聞など +101 休養・くつろぎ +66 趣味・娯楽 +21

<女性>

仕事 -164 睡眠 +31 家事・育児 +70 テレビ・新聞など +14 休養・くつろぎ +11 趣味・娯楽 -2

 

※2:http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakikata.html

※3:http://pmi-c.lekumo.biz/social_eye/2018/03/post-6644.html

 

 

ノラ猫

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